私たちは、様々な病気の治療に植物由来の成分を利用しています。
私たちは紀元前前から植物の力を借りている
例えば、解熱鎮痛薬のアスピリンはヤナギの樹脂から抽出された鎮痛成分のサリチル酸を元に合成された薬です。ヤナギの樹皮に鎮痛作用があることは紀元前前から知られており、古代ギリシャのヒポクラテスは発熱や出産時の痛みに対してヤナギの樹皮で治療したと伝えられています。
麻薬性鎮痛剤のモルヒネはケシの未熟果実から、強心利尿薬のジギトキシンはゴマノハグサ科のジギタリス(和名:キツネノテブクロ)の葉から見つかり、現在でも使用されています。
植物が薬効成分を持っている理由は?
このような薬効を持つ成分を植物が持っているのは偶然なのか、それとも何かしらの理由があるのでしょうか?
という疑問に対して、何かしらの理由がある可能性を示唆する根拠がいくつかあります。
本来このような薬効を持った天然成分は、植物が人間のためにわざわざ作っているわけではありません。これらの成分は植物が自分の身を守るために作っており、それがたまたま人間に薬効を示しているということです。
野菜や果物に含まれるポリフェノールやカロテノイドやビタミンCやビタミンEなのど抗酸化物質は、植物が日光の紫外線の害から身を守るために作っているのですが、人間はそれらを摂取することによって活性酸素を消去して老化やがんの予防に役立てています。
また、植物は昆虫や鳥や動物から食い荒らされないように、これらの生物に対して毒になるものを作っており、それらが人間の病気の治療にも使われています。毒は適量を使えば薬になるからです。
植物にとって「動けない」ということは、生存において最大の弱点と言えます。動ければ敵から逃げるという抵抗手段がありますが、動けない場合は、動物や鳥や虫から食べられないようにする手段を持つことができれば生存に有利になります。
例えば、「トゲ」は植物の防御機能の一つです。不快な匂いや味で捕食者を近づけないのも防御機構の一つです。捕食者やその植物を食べる気を起こさせないようにすることが、植物にとって生存のための基本戦略になるのです。
そして、捕食者(動物や鳥や虫など)に対して毒性のある成分を持つことは、食べられないための最大の抵抗手段になります。そして、これらの成分は適量を使えば薬となるのです。
漢方治療や薬草を使った民間療法やハーブ治療が効果を示す理由は、それらの薬草の中に含まれる成分が細胞の受容体や酵素と相互作用して、細胞の働きに影響するからです。
例えば、植物の中には、どんな抗癌剤よりも致死量が少ない毒性の強い成分も存在します。このような毒は動物を殺すこともできますが、適量を使用すれば薬にもなります。
植物は動物から食べられて全滅しないように毒を持つようになったと考えられており、このような成分が古くから病気の治療に多く利用されています。
まとめ
上記のように、私たちは植物の力を借りないと生きていけません。
ありがたくその恩恵をいただき、植物への恩返しをしていきまししょう。